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短編小説『カートに乗せた幸せ』(些細なことシリーズ)

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第1章:迷いの始まり

真美はスーパーマーケットのレジに向かう途中だった。彼女のカートには、日常的な食料品がきちんと積み込まれている。しかしその中に、ひときわ目を引く商品があった。それは期間限定の高級チョコレートだ。彼女は一瞬の衝動でそれをカートに入れてしまったが、レジに向かう足取りは重い。

このチョコレートは、鮮やかなパッケージで飾られ、特別なフレーバーを謳っている。だが、その値段は、普段真美が選ぶチョコレートよりも格段に高かった。彼女はその商品を手に取り、値札を何度も確認する。高価な価格に、彼女の心は揺れ動く。

真美はカートを押しながら、自分がこのチョコレートを本当に必要としているのか、それとも単なる衝動買いだったのかを自問する。彼女は、この小さな選択が、自分の消費行動や価値観について深く考えさせられるきっかけになっていることに気づく。

店内は賑わっており、他の買い物客たちは各々の買い物に忙しい。彼女は周囲を見渡し、他の人々がどのように商品を選んでいるのか、自分とは異なる選択をする人々を観察する。ある人は節約を心がけているように見え、また別の人は高級な商品を何の迷いもなくカートに入れている。

真美の心の中では、値段と品質、欲求と実用性の間で小さな戦いが繰り広げられていた。彼女はレジに近づくにつれて、自分の中で繰り返されるこの葛藤に、だんだんと疲れを感じ始める。しかし、この決断は彼女にとって、ただのチョコレートを買うこと以上の意味を持っていた。

第2章:家族の影響と自己省察

真美はカートを押しながら、ゆっくりとレジに近づいていた。彼女の目は、依然としてカートの中の高級チョコレートに釘付けになっている。彼女はそのチョコレートを手に取り、家族の反応を想像する。夫はおそらく「また無駄遣いをしたのか」と言うだろう。子供たちは喜ぶかもしれないが、そもそも彼らは普通のチョコレートでも十分満足する。

彼女は自問する。「私は本当に家族のためにこれを買っているのだろうか、それとも単に自分が食べたいだけなのだろうか?」彼女は家計を考え、この高級チョコレートを買うことが家族にとって最善の選択なのかどうかを考える。

店内の賑わいの中、真美は再び周囲を見渡す。家族連れを見ては、彼らがどんな商品を選んでいるのか、目の前にいる家族は、子供の欲しがるお菓子を優先しているようだ。別の家族は、厳選した健康食品を選んでいる。真美は、自分の家族に対する考え方と、これらの家族との違いについて考える。

このチョコレートを買うことが、本当に家族のためになるのか、それとも自分の小さな贅沢のためだけなのか、この消費行動が自己中心的になっているのではないかという疑問に直面する。

彼女は、この高価なチョコレートを買うことで得られる短期的な満足と、家族のニーズや家計に対する責任感との間で葛藤する。家に戻って家族の顔を見たとき、このチョコレートに対する彼らの反応をどう受け止めるべきかを思いめぐらす。

ついに真美はレジにたどり着く。彼女の手には依然として高級チョコレートが握られている。彼女の目の前には、最終決断を下すという重大な瞬間が待ち構えていた。

第3章:決断の瞬間、そして変転

真美は重い足取りでレジに到着すると、ふと、混雑する店内で奇跡的に誰も並んでいないレジを見つける。その瞬間、彼女の中で何かが変わった。「これは運命かもしれない」と思い、彼女は迷いを捨て、そのレジに向かう。カートに入った高級チョコレートを見つめながら、彼女はついに決断を下す。「もう買ってしまおう!」

しかし、レジ受けに到達したその時、予期せぬ出来事が起こる。男性が強引に横入りしてきたのだ。彼は、「すみません、急いでいるんです」と言いながら、レジの前に割り込む。真美は唖然とするが、男性は気にも留めずに商品をレジに出す。

この一瞬の出来事が、真美の心に大きな影響を与える。彼女は、その男性の態度に苛立ちを感じつつも、自分がレジに向かって急いでしまった心の動きを反省する。彼女は、この小さな出来事が何かの合図であるかのように感じ、再びチョコレートに目をやる。

「やっぱり、これは必要ないのかもしれない」と真美は思う。彼女は、この強引な横入りが自分にとっての何かのサインであると捉え、高級チョコレートを棚に戻す決意を固める。彼女はカートからチョコレートを取り出し、元の場所に戻すために向かう。

真美はチョコレートを手に持ち、商品棚に向かう。しかし彼女の心は軽く、どこか清々しい感覚に満たされていた。彼女はこの小さな決断を通じて、自分自身にとって何が本当に大切なのかを再確認したのだった。

第4章:意外な出会い

真美は手にした高級チョコレートを元の場所に戻そうと、商品棚に向かっていた。彼女の心は軽く、自分の決断に満足感を覚えていた。

しかし、棚に近づく彼女の目に飛び込んできたのは、同じチョコレートの新しいパッケージだった。それはただの新パッケージではなく、彼女が熱狂的に応援するアイドルグループ「スターライト」の限定版。しかも、彼女の一番好きなメンバー、輝くような笑顔の「リョウ」がパッケージに大きく写っていた。

さらに、この特別版チョコレートには「スターライト」の限定フォトカードが付いているという特典付き。ただし、その値段は通常のものよりもさらに高い。真美はそのチョコレートを手に取り、しばらく呆然としていた。彼女の心は葛藤で満ちていたが、同時にどこかわくわくしてもいた。

「これはただのチョコレートじゃない、リョウとの特別な繋がりを感じるアイテム…」と彼女は思う。彼女は自分が単に甘いものを食べたいだけではなく、推しのアイドル、リョウへの愛情を形にしたいという思いに気づく。

しかし、その値段は、、、。家計を考えると、この贅沢は少し自己中心的かもしれない。だが、彼女はこのチョコレートがもたらす喜びを想像し、心が揺れ動く。

真美は棚に戻そうとしていた通常のチョコレートをそっと置き、特別版のチョコレートを手に取る。

真美は、手にした「スターライト」限定版チョコレートをじっと見つめていた。彼女は、リョウの笑顔が輝くパッケージに心奪われ、限定フォトカードの特典に心を躍らせていた。しかしその時、彼女の目に留まったのは、さらに上乗せすることで得られる「もう一つの特別な特典」の告知だった。

この追加特典は、彼女の推しメンバー、リョウのサイン入りポスター。ただし、それを手に入れるには、すでに高価な限定版チョコレートにさらに追加料金を支払う必要があった。真美はその告知を見て、しばらく言葉を失う。その値段は、彼女が普段設けている買い物の予算をはるかに超えていた。

しかし、真美の中で何かが変わり始めていた。彼女は、この特別なチョコレートと特典が、ただの物質的な消費以上のものだと感じていた。これは彼女がリョウへの愛情を形にする、唯一無二の機会のように思えた。彼女は、その高額な追加料金を支払うことをためらいながらも、心の奥で強く望んでいた。

真美は、通常版のチョコレートを棚に戻し、限定版の商品を手にレジに向かう。彼女は、追加料金を支払い、リョウのサイン入りポスターの特典を手に入れることを決意する。彼女の心は高揚し、同時にどこか現実離れした感覚に包まれていた。

第5章:限界と覚醒

真美はレジに向かう途中、心の中で葛藤と高揚が交錯していた。彼女は限定版チョコレートを手に、リョウのサイン入りポスターの特典に思いを馳せていた。しかし、レジに近づくと、さらに衝撃的な告知が彼女を待ち受けていた。

「スターライト」の特別イベントへの招待券が、さらなる追加料金で付いてくるというのだ。このイベントでは、リョウと直接会えるチャンスがあった。真美はこの告知を見てパニックに陥る。彼女の心は、激しい欲求と現実の制約の間で引き裂かれそうになっていた。

真美は一時、この特別な機会を手に入れるためならどんな代償も払うことを考える。しかし、彼女の手がレジに届く寸前、彼女の目の前で起こったある出来事が、彼女を現実に引き戻す。

「ねぇ、ママ!」隣のレジで、小さな子供を連れた家族が笑顔で会話を交わしていた。

その小さな子供は母親に向かって「ママ、これ買って!」と言いながら、手頃な価格のチョコレートを見せていた。母親は笑顔で「もちろんよ」と答え、子供の顔は喜びで輝いていた。

この一コマに、真美は家族の本当の幸せの姿を見た。

子供は手にした普通のチョコレートを持って、嬉しそうに話している。その家族の幸せそうな姿が、真美の心に深く響いた。

彼女は、家族の幸せというシンプルなものの大切さを思い出す。真美は自分の家族を想像する。夫と子供たちが普段の小さな幸せの中で笑顔を交わしている光景が目に浮かぶ。

彼女は気づく。家族の幸せは、高価な商品や特別なイベントによって成り立つのではなく、日々の生活の中で育まれる愛情と共有の瞬間にあるのだと。

その瞬間、真美の心は穏やかな明晰さに包まれる。彼女は、特別版チョコレートとイベント招待券を棚に戻し、家族と共有できる小さな幸せを選ぶことに決める。

彼女は、家族のためにもっと手頃なチョコレートを選び、レジに向かう。彼女の心は家族への愛で満たされ、彼女は家に戻ることを心から楽しみに思う。

そして家族との幸せな夕食の時間を想像する。夫と子供たちが彼女の選んだチョコレートを笑顔で食べる姿を思い描き、心は温かな感情でいっぱいになる。真美は、家族と共にいることが、彼女にとっての最大の幸せであり、心の平安をもたらすことを実感する。

家族の笑顔が、彼女にとって世界で最も価値のあるものだと、彼女は心から感じるのだった。

おしまい。

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